ヴァティカン、聖体拝領に使用するパンとワインを指定したニュース
パンというよりおせんべいみたいです。
イタリアにいると、キリスト教関係のニュースには吹き出してしまうこともままある。
ヴァティカンのお膝元というのは、見なくていいものまで見えてしまうためか、真面目なキリスト教信者というのは私の周辺にはわずかしかいない。
この記事も、真面目に新聞記事になっていたのだが、私は笑い出してしまった。
ヴァティカンはなんと、「聖体拝領」で使用するパンとワインについて規律を定めたのだ。
いわく、
ワインは原産地が明記されたDOCと呼ばれる保証付でなくてはならない。
原産地が不明の「混ぜもの」もあってはならない。
ビールなどのほかのアルコールを代用してはならない。
古くなって酸っぱくなったワインを使用してはならない。
パンは、最近はやりの「グルテンフリー」であってはならない。
「アッジモ」と呼ばれる聖体拝領用のパンには、蜂蜜や砂糖やフルーツを添えてはいけない。
そして、パンもワインも誠実な人間の手によって生産されたものだけを使用すること。
作り手は、製造方法に精通していなくてはならない。
こんなことを、真面目に典礼秘跡省が、法王フランシスコの名前で決定したというのである。
典礼秘跡省がいわんとするところは、偽物や安物で聖なる儀式を行ってはいけない、ということなのだろう。
スーパーに行けば安価なパンやワインが簡単に手にはいるし、ネットでも食材の購入は難しくない時代なのだ。
まして、教会に通う真面目なキリスト教徒は減る一方だ。信者も来ないのに、わざわざ高いパンやワインを用意するのは、教会のお坊さんたちも大変なのだろう。
財源不足も深刻なのだそうだ。
フランスのサンスにあるカルメル会女子修道院では、修道院の維持のためにビールの製造まで始めたという。「聖体拝領」では使用してはならぬ、といわれたビールを生産していかなくては、修道院の運営がままならないのだそうだ。
確かにイタリアでも、各地の修道院で素朴なラベルを貼ったアルコール、蜂蜜、化粧品などがよく売られている。フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の化粧品がとくに有名だ。かの教会の化粧品店は、ローマには最近、支店までできた。あそこまでマーケティングが成功しなくても、メイド・イン・修道院の産物は重要な財源なのだろう。
「グルテンフリー」は昨今の流行であるが、聖体拝領用のパンは伝統的な製法を使ったものでなくてはいけないので、「グルテンフリー」は認められない。
しかし典礼秘蹟省は、グルテンに対してアレルギー反応を起こす「セリアック病」を患っている人は、このかぎりではないとしているそうだ。つまり、「セリアック病」の人は、聖体拝領に参加する際はワインだけで済ませてよい、という。
また、「アルコール中毒」の人は、ワインの代わりに「モスト」と呼ばれる葡萄ジュースで代用せよ、とあった。
そこまで細かく決める?と笑っちゃうけど、歴史があるという前提があるからかもしれないが、「儀式」というのは規則が多ければ多いほど「格式がある」ように見えるのも事実だ。
私の実家では、お盆は「仏さんのおもりがある」ので、8月のお盆の時期は外出もままならなかった。毎年、お盆のためだけに特殊な祭壇を設置し、お盆の間中朝昼晩と御供えのメニューがきっちり決められていたのだ。
聖体拝領のパンやワインについて事細かに規則を決めるのと、大差はないのかもしれない、と最後には納得した次第。