イタ飯百珍

イタリアが「他国に負けない!」と気を吐いているもの、それが「食」!最近は備忘録。

首相令連発

11月1日(日)

くだんのサディスティックなクライアントとはきっぱり縁を切り、気分もすっきりした。プライベートでやれやれと思うのと同時に、コロナの感染者数はとんでもない上昇を見せ始めている。

フランスやイギリス、ベルギーやオーストリアに続いて、イタリアもロックダウンがさけられない状況ではないかと噂が流れて、ここ3週間で首相令が次々と発布された。

1回目のロックダウンは物珍しさもあったし、とにかくこれを乗り越えなくてはとイタリア人も納得していた部分があったと思う。それに、季節は明るい夏に向かっていた。日に日に伸びる日脚は、精神的にも良い影響を及ぼしていたのだろう。夏が近づくことはすなわちバカンスを意味していたから、お金を払う客もロックダウン中の損失を取り戻そうとする観光業界も先に希望があったのだ。

 

2度目のロックダウンはどうだろうか。

先日夏時間が終了して、日が暮れるのが一気に早くなった。ロックダウンを行う国々の切なる思い、それはなんとかクリスマスをつつがなく過ごしたいということに集中している。そのためのロックダウンはやむを得ないと思う人がいる一方で、常に犠牲となるレストランやホテルやバールで働く人たちの怒りはもう抑えきれないところまで来ている。

「どうせリモートワークができる人だけが生き残るんでしょ」

とニュースでインタビューを受けていた女性のレストランオーナーがやけっぱちにつぶやいていたのが印象的だった。

とはいっても、こうした苦しでいる人たちを満足させて納得してもらうお金はもちろん政府にはない。どっちを向いても苦しいご時世になってしまったものだ。

1回目のロックダウンが終わった時、コンテ首相は「犠牲を払ってみんなで手に入れたこの成果を無駄にしてはならない」と言っていたし、みんなも心からそう思っていたのだ。しかし、犠牲を払ってもコロナは容赦なく感染を拡大させている。希望は消えて、絶望だけがあらわになってきた。

 

土曜日の日本人学校は、11月からオンラインに切り替わることが早々に伝えられた。昨日はかろうじて対面授業であったけれど、イタリアの学校で陽性が出た生徒は自己隔離となるため登校できた生徒は多くはなかった。

親友が連れて行ってくれた日本食材のお店で、少し多めに食材を買い込んだ。来るべきロックダウンを覚悟しているのか、秋晴れの週末は人があふれている。親友とも、来週からは会うことがかなわない。どちらの夫も神経質で、この状況での外食は禁忌!と申し渡されているのだ。

今日も近くのスーパーでいろいろ買い込んで、食材だけは豊富にある安心感に浸っている。

寒さが迫り冬が近づくこの時期に、再びロックダウンとなるのは精神的にもヘビーだ。足元からしんしんと寒さが忍び寄ってくるような、そんな心もとなさ。

フランスではニースでテロが起こりトルコでは地震。暗い気分に拍車をかけるような事件ばかりだ。

ニュースを見ていても鬱々とするので、昨夜は家族でブラジル人写真家セバスチャン・サルガドのドキュメンタリーを見た。白黒で構成されたドキュメンタリーそのものがとても素敵だったのだけど、画面から浮き上がるサルガドの彫りの深い顔立ちが美しかった。人間の愚かさを見尽くした彼のまなざしと言に、少し励まされた。

ナナミさんはエッセイの中でこんなことを書いていた。

「わたしは、生来の楽観主義者である。なぜなら、人間の馬鹿さ加減にも限界があると思っているからです」

そこまで達観できるほどいろいろなものを見たわけではないけれど、疫病の歴史も乗り越えてきた人間と自然を信じよう。

明日11月2日、新たに首相令が発布される予定。今夜は餃子を作ってお腹いっぱいご飯を食べて、明日からの1週間にそなえよう。