イタ飯百珍

イタリアが「他国に負けない!」と気を吐いているもの、それが「食」!最近は備忘録。

無題

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水曜日の私は忙しい。

朝、娘のクラスの男の子を一人拾って、娘ともども学校に送り届ける。

そのあと、農家直営市場に向かって野菜や果物、パンを買い込む。

家に着くころには、お掃除のお姉さんが来てくれる。

水曜日の市場で、私が野菜や果物を買うお店はアレッサンドラとマッシモという夫婦が営む屋台である。娘がまだ1歳にもならないうちから、彼らの野菜にほれ込んで買い続けている。

カステッリロマーニの農家直営市場がオーガナイズされたばかりのころは、アレッサンドラのお店はそれほど込み合うこともなかった。

今は口コミでその評判が広がり、平日の水曜日といえども彼女の屋台の前には列がなす。

ところで、アレッサンドラのお店のほかに、もうひとつ長蛇の列をなす屋台があった。

いかにも「農夫」という顔立ちのおじさんが営む屋台である。

アレッサンドラとマッシモは夫婦で経営しているから、奥さんのセンスで野菜や果物もきれいに並べてある。

ところが、そのおじさんの屋台はいかにも無造作に、リンゴ、オレンジ、ブロッコリ、サラダ、じゃがいもなどが木箱からこぼれるようにテーブルに投げ出されているのである。まるで、味で勝負できればそれでいい、と主張しているかのようである。おじさんが2年ほど前にこの市場に現れたときは、例によってお客さんもほとんどいなかった。

ところが、あれよあれよというまに人気店の仲間入りをしてしまったのである。

 

しのつく雨の降る今日、めずらしくおじさんの屋台にはお客さんがいなかった。

それで、私はきょうはアレッサンドラの屋台では買わず、おじさんのところで浮気をしてみたのである。

アレッサンドラとマッシモは、いかにもイタリア人らしくおしゃべりで、お客さんたちと楽しそうに話しながら物を売る。

ところが、このおじさんは無口で、その風貌はなにやら「野に遺賢あり」といった趣なのである。農業王国イタリアの一翼をなす気概みたいなものさえ感じてしまう(それはちょっと大げさか)。

お愛想ひとつ言わず、こちらが頼まれたものを袋に詰めていく。それだけだ。アレッサンドラみたいに、「おまけのセロリやパセリ、いる?」なんてことも聞かない。

イタリアでは「カナスタ」と呼ばれるサニーレタスは、娘の大好物である。アレッサンドラが売るカナスタは絶品であるが、おじさんのカナスタはさらに肉厚で、葉の先までおじさん同様に骨太感が半端ないしろものであった。

カーボロネーロと呼ばれる葉物の野菜も、無造作に左右に伸びをしているような格好で、見ているだけでおかしい。

 

夜になって、わが町には雪が降っている。

明日は、久々に温かい野菜スープでも作ろう。