非常時の日常
イタリア全土に移動制限がしかれた後、おさんどんはほとんど夫がするようになった。なにしろ家から出れないのだから、お腹もすかない。
お腹もすかないということは料理する気も起きないので、ありがたいことだと思っている。
私が住む小さな町には、高齢者が多い。というわけで、移動制限が発布されてから、町ではボランティアが高齢者の代わりにお買い物をするシステムがさっそく作られた。また、食料品店やパン屋さんやお肉屋さんも必要に応じて配達する旨が市役所のFBに告知されている。
イタリアの学校からは、毎日のように先生から生徒へのメッセージがクラス代表(うちの夫です)を届けられ、課題が添付されてくる。娘は、日本から送られてきたベネッセの教材とイタリアの学校の課題をこなして、合間にピアノを弾き、休憩時間には「キャプテン翼」を見ている。いつもは一人でこなす宿題には、今はパパのチェックが入る。
午後のひととき、ベランダでサッカーボールを転がして遊ぶ。ひとりっこは、こんな時にはかわいそうだなと思う。
非常事態の中にあって、少しずつ私たちはそれに順応している。
ネットで見ていると、スーパーは長蛇の列のところが多いらしい。
我が家は昨夜遅く、夜中の1時半過ぎに夫が24時間営業のスーパーに出向いた。
混乱はなく、5人ずつ中に入れてもらえたそうだ。入り口で使い捨ての手袋をもらい、普通に買い物できたそうだ。特に不足しているものはなし。
ただ、買いだめはやめろといわれても外出は最低限にといわれているから、どうしても保存が可能なものを買い込んでしまうのは仕方がないのかもしれない。パスタやトマトソースが売れるのは、とりあえずそれだけあれば飢えることはないというイタリア人の信念みたいなものだ。
そして今朝は、なぜか日本やアメリカのサイトにつながらないという状況が発生した。
イタリアのサイトには問題なくつながるのだから、イタリアテレコムに文句を言うわけにもいかない。
twitterで情報を集めてみると、ローマを挟んでわが町とは向かい側にあるブラッチャーノでも同様の現象が起きていたようだ。おかげで午前中は仕事ができず、イライラも上昇。ただし、午後にはこの不具合も解消した。イタリア中が在宅状態なのだから、ネットの不具合もいたしかたないのだろうか。
日本のクライアントに迷惑をかけるのではと焦燥感に駆られたが、考えてみたら個人の力ではどうしようもないこともあるのだ。私はいつでも、仕事に関しては最善を尽くす。不可抗力でどうにもならないときは、きっぱりあきらめることも必要だと思いきることにした。
コンテ首相は、twitterでこんなメッセージをのせている。
「仕事のことで心を痛めている人へ、すべてのお母さんとお父さんへ、すべてのおじいさんとおばあさんへ、友人たちへ。今日、愛する人と抱擁しあうことをあきらめなくてはいけなかったすべての人たちへ。私は、そのことを心に留めている。その痛みを共有している。今日もそして明日も、私はあなたがたとともにある」
そのコンテ首相から、今夜も新たなアナウンスがある予定である。