封鎖4日目
封鎖4日目。
朝から曇り。
午後は深い霧に包まれた。
今日は、娘がわたしのケータイを占拠、クラスの友人たちと1日中ゲームをしたりおしゃべりしたり、先生へのサプライズを話し合っていた。
おかげで私は仕事に集中できたが、夫は夫でビデオ会議。こちらも大声で話すので、私はホロヴィッツをイヤホンで聞きながら現実逃避。
午後の仕事は、ティツィアーノに関する記事だった。
90歳近い長寿を全うしたティツィアーノ、その遺作『ピエタ』にはおおよそヴェネツィア派らしからぬくらい空気が漂っている。自分の墓所をサンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ教会と決めたティツィアーノが、同教会に奉納するために描き始めたそうだ。
おそらく、筆の力も弱まっていたのだろう。
まさに死を覚悟した一代の天才の最後のあがきを見る気がする。実際にはこれは未完に終わり、弟子のパルマ・イル・ジョーヴァネが仕上げたのだそうだ。
偶然にも、ティツィアーノが命を落としたのもペストであった。
ティツィアーノの盟友で、30歳そこそこで早逝したジョルジョーネもペストが死因である。この時期だけに、その事実はしいんと胸に響く。
ミケランジェロの遺作の『ピエタ』もその深い精神性に心が震えるが、ティツィアーノのピエタもずっしりきた。彼の作風は、若いころには劇的で明るい色彩であったからなおさら。
というわけで、封鎖4日目はホロヴィッツとティツィアーノに慰められた。
平野啓一郎氏の『ある男』では、運命に翻弄される少年が文学によって救われるエピソードが登場する。
文学や音楽には、強い力があるのだ。
#iorestoacasaには、実際たくさんの美術館が参画している。
Se non possiamo andare al museo, ora è il museo a entrare nelle vostre case grazie a internet.https://t.co/9CaSKLq7Us pic.twitter.com/vWOFkhmiNn
— Gallerie Uffizi (@UffiziGalleries) 2020年3月13日
芸術は自分の目で見てこそ意味があるのだろうけど、こんな時はヴィジュアルでもじゅうぶんに目の保養になる。
「人はパンのみに生きるにあらず」なのだ。ドイツが、こんな時だからこそ文化への助成が不可欠と言ったのには、芸術の国イタリアも「負けた」と思ったのではないだろうか。
明日は土曜日である。
週末の封鎖は、イタリア人にはよりつらいものになる予感がする。
Condivido volentieri questo video: #flashmob di Alessia e Emanuele a Firenze. Una cosa è certa: da quest’esperienza ne usciremo migliori! #flashmobsonoro pic.twitter.com/8Xtbvd1mtd
— Dario Nardella (@DarioNardella) 2020年3月13日
今日は夕刻、フラッシュモブで町に国歌が聞こえる。
曜日の感覚は皆無だけど、金曜日の夜だというのに心が浮き立たないのは少し寂しい。