イタ飯百珍

イタリアが「他国に負けない!」と気を吐いているもの、それが「食」!最近は備忘録。

封鎖4日目

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ティツィアーノ作「ピエタ」。90歳近い老画家の遺作となった

 

封鎖4日目。

朝から曇り。

午後は深い霧に包まれた。

今日は、娘がわたしのケータイを占拠、クラスの友人たちと1日中ゲームをしたりおしゃべりしたり、先生へのサプライズを話し合っていた。

おかげで私は仕事に集中できたが、夫は夫でビデオ会議。こちらも大声で話すので、私はホロヴィッツをイヤホンで聞きながら現実逃避。

午後の仕事は、ティツィアーノに関する記事だった。

90歳近い長寿を全うしたティツィアーノ、その遺作『ピエタ』にはおおよそヴェネツィア派らしからぬくらい空気が漂っている。自分の墓所をサンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ教会と決めたティツィアーノが、同教会に奉納するために描き始めたそうだ。

おそらく、筆の力も弱まっていたのだろう。

まさに死を覚悟した一代の天才の最後のあがきを見る気がする。実際にはこれは未完に終わり、弟子のパルマ・イル・ジョーヴァネが仕上げたのだそうだ。

偶然にも、ティツィアーノが命を落としたのもペストであった。

ティツィアーノの盟友で、30歳そこそこで早逝したジョルジョーネもペストが死因である。この時期だけに、その事実はしいんと胸に響く。

ミケランジェロの遺作の『ピエタ』もその深い精神性に心が震えるが、ティツィアーノピエタもずっしりきた。彼の作風は、若いころには劇的で明るい色彩であったからなおさら。

 

というわけで、封鎖4日目はホロヴィッツティツィアーノに慰められた。

 

平野啓一郎氏の『ある男』では、運命に翻弄される少年が文学によって救われるエピソードが登場する。

文学や音楽には、強い力があるのだ。

#iorestoacasaには、実際たくさんの美術館が参画している。

 

 芸術は自分の目で見てこそ意味があるのだろうけど、こんな時はヴィジュアルでもじゅうぶんに目の保養になる。

「人はパンのみに生きるにあらず」なのだ。ドイツが、こんな時だからこそ文化への助成が不可欠と言ったのには、芸術の国イタリアも「負けた」と思ったのではないだろうか。

 

明日は土曜日である。

週末の封鎖は、イタリア人にはよりつらいものになる予感がする。

 

 

 今日は夕刻、フラッシュモブで町に国歌が聞こえる。

曜日の感覚は皆無だけど、金曜日の夜だというのに心が浮き立たないのは少し寂しい。